さてさて、長谷川町子さんの目が、私たちに教えてくれるものとはいったい何なのでしょう。俳優とか声優とかではなく、普通の私たちの話し方の極意についてであります。
故村上さん(密蔵院の客殿のこけら落とし講演会の模様)の話の続きでございます。----
-----うっかりすると、僕たちは大人の目になりたがります。実は、色んな所へ行ってよく聞かれるんですが「村上さん、話のコツってありませんか」って。そんなひと言では言えやしないんですけど、もしあるとすれば、如何に自然に喋るか。自然に喋るってことは「作るな・気取るな・偉ぶるな」ってことです。私たちはどうしもつくってしまう。
たとえば今日、初めてこの密蔵院のお仲間に入れてもらうのに、初めて顔を見せるんだからって、気取って「わたくし、村上でございます」って言ったからったって、「村上ってぇのは、本当は京都の武者小路伯爵の忘れ形見だ」なんて思われるはずないんです。(笑)つい気取ってしまいます。気取っていい声だそうとか。私はこの歳して、今でも自分に言い聞かせるつもりで言ってるんですが、今でもそれがあります。たとえば、こういう集まりなんかがあって、パッと舞台に出る。そうすると、一、二、三、四、五番目、あそこにいい女がいるな、なんて思うとつい気取ってしまいます。で、あがってしまいます。――その点、今日は楽に喋れるんですけれど……(笑・拍手)
続きはまた、明日!