「住職さん、区画整理で家を少し移動して新築したので、住所変更してください」と檀家の奥さん（まだ亡くなった人はいない家）が新住所のメモお持ちになられた。「ほい、次の案内はこちらに出しますね」と笑顔で答えた。すると彼女は心配そうに「それから、知り合いに『家を新築したら、仏壇を祀って先祖代々のお位牌をつくったほうがいいわよ』と言われたのですが、そうなのですか」と言った。
私はピーンと来た。またＫ・Ｈ女史大占い先生がどこかで、そんなことを高圧的におっしゃったのだろう。それを聞いた人が、真意を伝えずに表面だけを伝聞し流布しているのだ。
私は言った。「それは、新しい家を建てられたのを自分たちの努力だけだと天狗になってはいけません、先祖のおかげをしっかり再認識しておきましょう、ということを言いたいんですよ。先祖の位牌を造って祀らないと、せっかくの新築の家で悪いことが起きるという意味ではありませんから、今度ご実家の先祖の墓参りをした時にお礼を言えばいいですよ」
安心した様子でお帰りになられそうだったので、付け加えた。「そのことを言ってくれた知り合いの方にも、真意はそういうことなんだってさと伝えて、それ以上”先祖の恐怖”を広めるのをやめてもらってくださいね」