美味しい浜梨をいただいたのでお礼状を書いた。
「夏の日ざしが残した美味しい置き土産」。そんな言葉がスッと出た。

旬の食べ物というのは、それを育てた季節があったおかげ。
目の前の成果だけにヨダレを垂らしている場合ではないと思った。
そうしたら、尊敬する故村上正行アナの詩を思いだした。
朗読の研修用にご自分で書いたものだそうだ。
これを機にご紹介しよう。
「夏よ さようなら」
海の子は、夏を惜しんでまだ泳いでいる。
遠くの水平線に
すっかりやせてしまった雲の峰――。
つめたい水をくぐって顔を出した少年はよびかける。
「八月さん――
ことしはひどかったじゃないか。
まいにち まいにち カンカン照りで。
そのかわり、来年は ちっとは雨も
降らして おくれ」
どこかで、―― スマン スマンという声が
聞こえた様な気がする。
少年は、見えない八月に
しずくを たらしながら 手をふっている。
北国の少女は、
夏を惜しんで まだ歩いている。
なごりの サビタの花を散らせて吹く 白い風――。
そのつめたさに おどろきながら
秋のあしおとに 耳をそばだてる。
そう――、山の頂きに ひとしずくの赤インキが
したたり落ちたかと思うと、
紅葉は ふもとをめがけて 駆けおりてくる。
そして もうすぐ あたりは 白くなる。
「今年の夏も とうとう あえなかった。
だから、八月さん
来年こそ 誰か いい人 連れてきてね」
どこかで、―― スマン スマンという声が
きこえた様な気がする。
少女は、見えない八月に
はずかしそうに 手を ふっている。
