
机の片隅に、家内の字で、紙片に書かれたメモ書き。そこには、こうあった
芳彦 ○○さま、△△さま、本日はお日柄も良く、まことにおめでとうございます。ふつつがらご両家のご結納を取り次がせていただきます。本来ならば私どもがご両家に持参するはずのものでございますが、略儀をもちましてこの場で、幾久しくご結納をお納め願いたく存じます
×子 ○○さまからのご結納の品でございます。幾久しくお納めください。
△△さまからのご結納の受書でございます。
芳彦 これで、ご両家のご婚約はかたくととのいました。本日は、まことにおめでとうございます。
「現代マナー辞典」、結納中の口上である。
家内は、今日の結納の仲人の大役を真摯に受け止めて必死である。かわいいと思う。
それに比べて、私は仲人の口上くらいはどうということはない、両家に礼を尽くし、お祝いの真心をもって臨めば、大丈夫だと知っているから、のんびりモードなのだ。
夕べ、住職室へ「マナー辞典」の結納のページにしおりを挟んでもってきて言った。
「あなた、ちゃんと、これ読んで頂戴よ。いろいろ、あなただって言わなくてはいけないことがあるよの」
がはははは。こういう時の生返事は危険だということは26年一緒にいるからよく分かる。
そこで、娘を呼んで、両家の代役にさせ、和室でリハーサルと相成った。
私は大意をつかんで、その場の雰囲気で口上を述べようと思うが、家内はそうはいかないらしい。
セリフを一言一句間違えないように、小学生の学芸会並の言い回しである。すごく、初々しくて良かった。
今日をかぎりに離婚届に印を押す夫婦もいるだろう。
そして、今日、晴れの日本伝統の婚約式を迎えるカップルもいる--そういう話である。
