
地元でも古い歴史のある中学校での、道徳公開授業。
本来は全学級で道徳の授業を公開した後で行われる講演会という形式が一般的だが、校長先生の「こういう話は生徒にも聞いてもらおう」という計らいで、420人の生徒の前で話をさせてもらった。
それにしても、体育館の壇上は高い。どうしてあんなに高いのだろうと思う。
いきなり舞台へ校長先生と上がったのだが、私の紹介を校長先生がしてくれたので、助かった。この高所からどのように全生徒が見えるか、確かめる時間があったからだ。視線の位置が一メートル上がったから、普通はそれだけで頭が真っ白になるものだ。
それでも、ステージの椅子に座っている間に、動悸を感じたのは久しぶりだった。
「ドキドキは心の応援団の拍手だよ」と、20年前に大先輩のお坊さんから聞いたことは今でも役に立つ。
おかげでドキドキを楽しめた。
自ら禁じ手にしておいた「アルミ缶の上にある蜜柑」の封印を解いて、
「こんにちは」と言ってから、お辞儀をして袋の中から、中学の近所の路上の自販機で買ったコカコーラのロング缶を壇上に無言で置いた。
そして、その上に蜜柑を、これも無言で、載せた。
「これ、何て言うか知ってるかい?アルミ缶の上にある蜜柑、って言うんだよ」
中学生がお坊さんの話を聞く・・・「お坊さん」という真面目で、気難しそうなイメージをいかに早い段階で壊してもらうか・・・・
手応えは充分だった。
言い話ができたとは思わないが、楽しく話せた。そして楽しく聞いてもらえた気がする。話の間、がっくりと首を下げて寝ているような姿勢になった子は、舞台上から見るかぎり、二人だけだった。給食の後の時間だったのに、みんな、良くがんばりました。
帰りに校庭を通ると、野球部の子供たちが「今日はありがとうございました」と帽子を脱いで挨拶してくれた。
オジサンはそのさわやかさが、素直に嬉しかった。自分が逆の立場になったら、あのさわやかさでお礼を言おうと思った。
