
お釈迦さまの弟子の中に、アナンという人がいた。
ある時、田舎道を歩いていると、脇の茂みの中から目の前にビョコンと化け物が飛び出してきた。
見れば、全身骨と皮。ほとんど何も食べていないのだろう。栄養失調のようで、腹部ばかりがふくれている。
それでいて、目ばかりがギラギラして、周囲の者を何の理由もなく、やみくもに恨んでいるかのようだった。
化け物は、瞬きもせずにアナンをにらみながら、ゆっくりと口を広げた。乾いてひびのわれた薄いくちびるはパリパリと音を立てて、耳のそばまで裂けた。
ぱっくり開いた口の中は、メラメラと赤黒い火が燃え盛っていた。
アナンは驚きと、気味の悪さで自分の心臓がオエッと掃き出されそうになるのを、手でなんとか押さえた。
化け物は、ヴォイスチェンジャーの機械にかけたようなしわがれた、それでも明瞭な声で言った。
「けけけけ。おめぇがアナンだな。あー何だったっけ?なんてガキの頃からいじめられて、シマウマじゃねぇ、トラウマになってるんだってな。けけけ」
「なっ、何の用だ。化け物」
アナンは少し気が落ち着いて化け物に問うた。
「うはっ!それを聞きたいか?ぎゃははは。そうか、そうか、それを聞きたいのか」
「私が聞きたいのではい。お前が言いたいのであろうが、バケモノ、じゃない、バカモノめ」
アナンはバケモノが自分から何か言うために出てきて、それを相手である自分に聞きたいかと尋ねるほどの馬鹿者だと分かったので、すっかり元気になった。
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明日は密蔵院の施餓鬼なので、今日はこのへんで休みます。あははは。
続きは、多分6月2日になります。
だって、明日は一年で一、二をあらそうほど忙しい日だかです。
でも、思い起こせば去年も同じことを書いたような気がしますが、今回は今回で書き下ろしですから、おつきあいください。
