
「ひ~とり、ふ~たり、三人よれば~、だ~れもかなわぬ、文殊の智恵よ~。もん、もん、もん~。文殊だも~ん」
こう歌いながら、階段を降りて来たのは、ご存じ、三人よれば文殊の智恵の文殊菩薩、その人。横に百獣の王、ライオンを連れています。さすがの宗帝王の家来である猫も大蛇も怖じ気づいて後ろへとさがりました。
「こんにちは、宗帝王さま。ご機嫌よう」
「おお、これは文殊さま。そろそろおいでになる頃だろうと思っておりました」
「で、どうですか、今日は。妻がありながら別の女性と関係を結び、夫がありながら別の男性とイチャイチャしていた者たちはおりますか?」
「はあ、なんとも情けないことですが、特に日本からの亡者に多いようでございます。『不倫は文化だ』などとバカなことを言った輩の倫理なき、裏切り的影響が未だかの国を覆っているようでございましてな」
「ふーっ」と文殊菩薩は肩を落とすと、ため息をもらして続けました。
「しかし、宗帝王さま。ただいま遺族が亡者のために、精一杯の供養をして功徳を積んでおりますので、情状酌量を願いとうございます」
「ほう、不倫をされて裏切られた者が、このアホな亡者のために功徳を積んでおるのでございますか?」
「はい、亡くなってからわかることもあろうかと存じます。
『思えば自分がちゃんと相手をしてあげなかったから、別の人の所に走ったのかもしれない』とか
『同じ目標を持って生きていなかったのが行けなかったのかもしれない』とか
『どんなことも一緒に何かをやって共通体験をし、それをきっかけに人生について深く話し合わなかったのがいけないかったのではないか』と、
涙さえ流している遺族さえおるのでございます」
「たいした遺族でありますな。そういうことならば、少しは大目に見てもようございます」
この話を聞いていた亡者の中に、心の中で「しめしめ」と思った者がおりました。
すると、その気配を敏感に察知したライオンが牙をむき出して、その亡者に迫って人語を操って耳元でそっと呪文を唱えました。
「どんないい男であろうと、いい女であろうと、一皮向けばシャレコウベ。信頼という言葉の持つ重さもまだわからない。淫乱夜郎の慣れの果て……」
ライオンがそう呪文を言うと、亡者は、みるみるうちに、すべての皮膚や肉が体の内部へ内部へと巻き込まれ、やがて何かイヤラシイ形をした固まり(これをこの宮殿では”邪淫玉”と呼んでいます)になって、床をごろごろを転がりました。
ライオンがその固まりを大きな前脚でひょいと前方に転がすと、悪猫が爪をたててじゃれて、その引っかき傷で…駄目だ、これ以上気持ち悪くて書けない。
猫が遊ぶのにも飽きると、今度は蛇がその固まりをあんぐりと開けた口で丸飲みにしてしまいました。
本来であれば、文殊菩薩の担当である“智恵”についてお伝えすべきところですが、それはまた別の機会にさせていただきまして、文殊菩薩の登場の場は次の五官王へと引き継ぎまする。べ、べ、べんべん・・・。
◇ ◇ ◇ ◇
台風の大雨で被害にあわれた方にお見舞い申し上げます。
亡くなられた方々も大勢いらっしゃいます。先程本土うでお線香をあげて、短いお経ですが、唱えさせていただきました。
急に台風になったこの一両日。アレヨアレヨという間ですね。
昼過ぎに、客殿の網戸3枚をはずして、雨がちゃんと当たるところへ横にして置きました。自動網戸洗い機であります。
