
「悪声に技あり」--声が悪いことに劣等感を持っていた父が、ご詠歌という祈りの歌を習う時に、先生から言われた言葉だそうだ。
きれいな声は、それだけで素晴らしい。心にスキッと入ってくる。
声量の大きな声も、迫力がある。
しかし、逆も真なりではない。
かすれた、嗄(しわがれ)れた声で歌われる歌、森進一さんや八代亜紀さんのような声は、心にじんわりしみ入るような力を持っている。
か細い声も、気負いの無いぶん、お仕着せがましいところがなく、いい。
夕べ、高野山金剛流のご詠歌公演にご招待いただいて、客席で拝聴させていただいた。五十歳までのご詠歌の先生たち二十名による80分の公演である。
きれいな声で、唱える技術も圧巻、イケメンの坊さんたちが多かった。
公演の中で、指導役の先生が登場して、一曲唱えてくださった。
秘曲「玉川(たまがわ)」。
呼吸をするのを忘れるくらいの素晴らしさ。これを「枯れた味」とはいえない。別の何かである。
美空ひばりが九十歳になって、孫を抱いて子守唄を歌った感じ……
氷川きよしが七十歳になって、アベマリアを歌う感じ……と言えば、いくらかおわかりいただけるだろうか。
興味のある方は、『高野山金剛流御詠歌--曼荼羅の響--』でお調べになるといいです。全国で行なわれている公演ですから。
