
密蔵院の境内の銀杏の上にいる子共のカラスは巣立ったのだろうかと、この2週間くらい思っていた。あまーい、甘ったれたクワァ~という声が聞こえなかったからである。
それがどうだろう……。今日は朝から、ずっと、フニャラフニャラと鳴いている。そろそろ巣立ちで、親カラスが、飛ぶ訓練をさせているのだろうか。
「怖いよ~、嫌だよ~」と鳴いているように聞こえる。
同じ敷地に住んでいるもの同士として(これは冗談で言っているのではありません。本当に同じ敷地の住人なんです)、気になることよ。
カラスの黒く艶やかな羽根を間近で見ると、やっぱこれが日本人の黒髪の理想なんだわなあと思う。
--髪はカラスの濡れ羽色(ぬればいろ)……
◇ ◇ ◇
夕べは、今まで思ったことがないことを、APFの記者の方から聞かれた。
「なぜ、バーでお経のパフォーマンスをするんですか」
「仏教の出前です。普段尊い人と思われている坊さんですが、こうやって普通の人たちの暮らしの中に入ることにも意味があると思うのです」
だいだいは、それで納得してもらえるものだが、彼女は違った。さすが日本とフランスのハーフである。
「普通の人たちが娯楽として楽しんでいる中に身を置いてこういうパフォーマンスをして、僧侶としての尊さは消えないのですか」
「……、そんなこと考えたことなかったですね」
……今日になって考えてみたら、尊さが消えるも消えないも、もともと私には尊さなどないではないかと思い当たった。ぐはは。
私の場合、一般の方と違うものって、何なのだろうと思う。
皆さんより、俗の部分を余程たくさん持ち合わせていることだけは確かである。
今も、銀杏のこずえで、子供のカラスがクワァ~と甘えた声で鳴いている。
