
法事に6カ月の赤ちゃんが来ていた。
密蔵院では法事が終わってお話が終わった後に、直径60センチ程の大太鼓を思いっきり叩いて、全員で般若心経を唱える。
やり始めて10年以上たつが、今まで泣いた赤ん坊は一人もいない。たぶん耳ではなく体で聞いているのだ。懐かしい胎内で感じていた懐かしい母の鼓動に似ているのかもしれない。凄まじい音の中、寝てしまう子もいる位なのだ。
しかし、大人は心配する。
だから言った。
「大丈夫。今まで泣いた赤ちゃんはいないから」
それでも心配そうだった。だから加えた。
「泣いたら、記念すべき第1号の赤ちゃんだから何か記念品をプレゼントするよ」
情けないことに太鼓を叩きながら思った。
「記念品目的で、赤ちゃんのお尻をツネッテ、泣かせるなんてこたぁないだろうな……」
もちろん杞憂に終わった。わははは。もうそんな事を思って太鼓を叩くのは止めようと思った。
