とあるホールでご詠歌の大会があった。ステージ上に薄い赤い毛氈(もうせん)が敷かれている。
ある団体がスポットライトを浴びて日ごろの成果を披露した。
ところが、唱えおえて立ちあがった時に一人の方の足もとの毛氈がめくれてしまったのだ。
あわてた彼女は足でそれをなおした。講評役の先生は思わずマイクで言った。
「ご詠歌も器用にうまくお唱えになりましたが、足も器用な方がいるんですね」
場内に笑いごえがひびいた。
それから二年の月日がながれた。
件(くだん)の団体の先生は、昨日、今年も同じ講評役の先生に言った。
「あの時の事があるので、あの人は『今年のご詠歌大会の舞台では前列には座らない』と言っているんですよ」
「へぇ、そうなんですか。会場を和(なご)やかなムードにしてくれたのに、勿体ないですね。それなら、今回はお唱えが終わった時に『あの足の器用な方は、今回はどちらにいらっしゃいますか?』とマイクで言いましょう」
もちろん、講評役は私です。ぐははは。
