[ある受刑者への返事 その6/6]
こだわりが多い人はすぐに「~べき」と考えるクセがあります。「~べき」と思っていれば、そうしない人のことを許せません。許せないので、怒り、力ずくで言うことを聞かそうとするでしょう。これが暴力になります。
怒りは心を乱す煩悩の一つですが、その特徴は、その行動が外に向かうという点、つまり相手を傷つけるという点です。
実は、多くのことはこだわるほどのことではありません。どんなことにも「これはこういうもの」という不変の実体があるわけでもありません。〇〇さんがこだわっていることを、ちっとも気にしていない人は世の中に佃煮にできるほどいるのです。ですから、自分がこだわっていることなど、たいした問題ではないのです。娑婆世界はそうなっているのです。
私が申し上げてきたことを頭で理解しても、それを日常に生かすのは大変だと思います。
大変で、かつ面倒ですが、いつでも、どんなことがあっても、心おだやかでいる人になりたいなら、二度と刑務所には戻りたくないなら、練習したほうがいいでしょう。
できないことを練習と言うのです。
無事に刑期を終えて、否、その前に模範囚として仮釈放されて、生きづらい娑婆世界で、怒りの元になっている“ごだわり”から離れた、心おだやかな日常を取り戻されることをお祈りしています。