[ある受刑者への返事 その5/6]
さて、すべては変化してしまうので、「これはいうもの」「これはこうあるべき」「こういうときはこうすべき」と言えるほどの不変の実体はないということになります。
〇〇さんが思い込んでいることや、先入観もじつはその実体などありはしないのです。不変の実体がないことを「空」と言います。
ここから、「いつでも、どんなことがあっても、心おだやかでいる人になりたい」と願っている人に対して、仏教は“こだわり”から離れたほうがいいと説きます。
刑務所に入る人の多くは、自分の「こだわり」のために罪を犯していると言ってもいいでしょう。
そのこだわりが何なのか、金か、力か、権力か、弱さの裏返しの強がりか。それをまず見極めることが必要になります。
そして、そのこだわりが、(心おだやかになるために)正当なものなのかを、自らの胸に問い、腹に答えるのです。