本堂やお墓や仏壇の花はどうしてこちら向きにあげるのかという話題に触れたのは昨日のこと。何人かの方から「教えて!」と聞かれた。「本を買って!」と返事をしたけど、どこに書いたのか調べたら処女作『般若心経 人生を〇洗い』だった。たぶん絶版で(電子書籍なら買えます)、申し訳ないので、ここでご紹介しようという魂胆。
~花はなぜこちら向きにあげているのか~
仏壇やお墓、あるいはお寺の本堂にはお花があげられています。仏さまにあげる花(仏花)はほとんどが束になっています。その花束には正面があり、正面がこちらを向いています。
そのままだと、仏さまや亡き人からは葉っぱが64枚くらいしか見えません(ハッパ64ですから……)。
お坊さんになりたての二十代前半のころ、先輩のお坊さんにこれを質問すると、こんな説明をしてくれました。
「花は寒い季節を我慢して開花する。だから花は“いつか心の花を咲かせるために我慢する心”を表しているんだ。もう一つ、花を見ているとみんな心がおだやかになってやさしくなるから“慈悲”を表してる。つまり、この二つの心を花に託して、仏さまや亡き人に届けているんだよ。
ところが、その気持ちを受け取った仏さまや亡き人は、その気持ちのうち3割だけ取って7割はこちらに返してくれるんだ。
だから、わざわざ花をこちらに向けてあげるのは、“今は、あなたの我慢する心が事によってかたい蕾だったり、優しい心が時によって萎れかかっているかもしれないけど、いつかこの花のように心の花を咲かしていくんだよ”という、仏さまや亡き人からの応援の花束、メッセージなんだよ」
以来、私はこちら向きの花の前で合掌する時に「今の自分はこの応援の花束に応えているだろうか……」と考えることが多くなりました。
※写真は、昨日届いた小さなファンが作ってくれたお地蔵さまのプラバン。ありがたいことです。大切に使います。