話の流れを考えるのは、新鮮な話を入れたいから基本的に前日だ。今日の60分の話の流れも昨晩考えた。しかし、今日、住職である友人が私を紹介する前に、先月亡くなったお母さんのことを話した。それを受けて、予定になかった“勘違い親孝行”の話からスタートした。どんな話か要約すると、親孝行の八割は無事に生れただけで終わっているという話である。残りの二割は、三歳までに見せてくれる笑顔で一割清算が終わり、最後の一割は自分がどう生きるかで返すしかないように思われる、という話である。実際に話せば、私の経験談だから15分かかるが、こうして要約するとぜんぜん面白くない。映画『タイタニック』を「おばあさんの自慢話」と言い放つようなものだ。ちなみに、筒井康隆著『日本語裏辞典』では【要約】を「犯罪行為」と明解に解説してある。ぎゃはは。わかったような顔をして「要は」とか「つまり」なんてまとめるのは、断固として犯罪行為である。ついでに同辞書では【主題】をこう解説してある。“未だに「この作品の主題は?」と聞くやつがいる。主題は読者が見つけるもの。作者にとっては作品の全部が主題である。”--名解説だと思う。法話をする坊主にとっては、話全部が主題であって、要約は意味がなく、犯罪行為なのだ。※もちろん、友人は最後に私の話をまとめるような無粋な真似はしなかった。彼の名誉のために申し添えておく。
和尚ブログ ほうげん日記
2019年07月28日