「私が死んだら、折れた線香の一本でもあげてやっておくんなせぇ」は、講談や浪曲に良く出てくるセリフ。一度でも打ち解けたことがある仲で、しかし頻繁には会わない人に言うセリフだ。他に「千僧万僧の(唱える)お経よりも、あんたがあげてくれるその線香がありがてぇ」なんて、坊主にとっては聞き捨てならない愉快なセリフもある。ぐはは。密蔵院の「浪曲の広場」に何度も出演してくださった港家小柳(こりゅう)師匠が10日に亡くなったことを今日、フェイスブックで知った。すぐに本堂へ行って、折れていないお線香を一本あげて冥福を祈った。「世話になった下町の、しがねぇ和尚が手向けにあげる、十方世界(じっぽうせかい)に届く、せめてもの香りでゴザンス」と心の中でつぶやいて、手を合わせた。
和尚ブログ ほうげん日記
2018年05月14日